track jacket

non title

lyrics

      
どこかの路地裏にあるような
名前のない店に なりたい
どこにもないような
どこにもないような

ここは同じ景色の繰り返し
今も出来ないことだらけ
お気に入りの椅子はありますか?
どこにもないような

どこかの旅先にいるような
名前の知らない人に なりたい
どこにもいるような
どこにもいるような

それは同じものがない物語
いつも出来事は突然だ
曖昧のままでもいいですか?
どこにもいるような

あの日見た映画
タイトルを忘れたままで
ここにいる
旅の途中で見た夢みたい
きっと偶然で
ここにいる


どの街にもあるありきたり
小さな変化にハッと息をのむ
見逃してたような
見逃してたような

それは同じ景色の繰り返し
今は移ろうこと忘れ
素直に笑っていましたか?
見逃してたような

どこまで行ってもあるような
変わることないもので ありたい
見過ごしちゃうような
見過ごしちゃうような

それは同じものがないクラシック
いつも出来事は偶然だ
少しだけ信じていいですか?


あの日見た映画 
タイトルをつけないままで
ここにいる
旅の途中でまだ夢みたい
きっと偶然で
ここにいる

      
    

notes

「偶然なるものに自分を賭けて手探りにうろつき廻る罰当たりだけには、物の必然などは一向に見えないけれども、自分だけのものが見える。」坂口安吾

たまたまネットで見かけた言葉なんだが、僕には難しかった。その時は全部日本語なのに、ちっともわからなかった。でも気になっていたのでコピペしといた。そうしないとすぐ忘れてしまう。まさか見た映画のタイトルを忘れてしまうとは…。

映画がつまらかったわけじゃない。シーンも憶えてるし、その映画を見たからこそ、歌詞を書いた。でもその映画は、なんとなくアマゾンプライム(いや、ネトフリか?)でクリックしたから見たわけで、自分で探して選んだわけではない。たまたまオススメに出てきただけ。なんとなくの偶然。もちろん履歴を見ればタイトルもわかるけど、いまさらタイトルを知ったから何だというような気もしている。だから調べないまま。ただ「世界を旅する」がテーマだった。

僕は地方に住んでるわけで、街の風景といえば、あのおなじみの郊外パターン。幹線道路沿いに全国どこにでもあるチェーン店の看板とかが記号的に並んでるアレ、いわゆるファスト風土ってやつ。

ところで“カフェ・デル・マー”って知ってます?イビザっていう島にあって夕日がキレイらしい。昔は、行ってみたかった。そのコンピレーションアルバム(個人的にはvol.5と6)が大好きだった。ホセ・パディーヤというDJが選曲してて、彼がかけるとどんなジャンルの曲でもカフェデルマーの音になるって感じだ。彼のその選曲のおかげでジャンルなんかを気にしないで様々な音楽を探して聞くようになったと思う。そんな憧れたカフェデルマーみたいなどこか素敵で特別な場所に、旅にでも行きたいな、と思いながら、その映画をみてた。

見終わってしばらくしてから、思ったこと歌詞にしようと書き始めた。名前のない店=ネットに載ってない=特別な、ジャンルに縛られないものになりたいなって。でも続きを書いてるうちに、だんだんそれってただの無いものねだりかもしれないとも思ってきた。今いるこのありきたりの風景もそこそこ便利だと思っているし、それに、そこにいる人はみんな違うんだから、同じような風景だけど、同じではないんじゃないかと気付かされた。だからこの歌詞になった。

僕はきっと大した場所で生きてない。だけど、この“大したことない感じ”が嫌いじゃない。特別でなくてもいい。僕らは名前のない風景のなかで、それでも自分だけの物語を持ってしまうはずだから。そもそもタイトルやジャンルなんてあくまで他人に伝えるためのただの入り口の記号なんじゃないかな。

「〜自分だけのものが見える。自分だけのものが見えるから、それが又万人のものとなる。芸術とはそういうものだ」

坂口安吾の言葉の続きはこうだった。たぶんホセ・パディーヤの選曲もそうだった。今なら少しだけわかったような気がする。